相続人調査と財産調査
相続というと、遺産の額がどれくらいか、また、誰が財産を相続するのか、に目が行きがちですが、それ以前にそもそも誰が財産を受け取る権利があるのかを確定しなければ手続きが進みません。
「分かっているから、調べなくても大丈夫。」という考えでいると、思わぬ事態に陥ってしまう危険性があります。
場合によっては、想像もしなかったような人が相続人として出てくることも少なくはありません。
ですので、初期段階で「誰が相続人であるか」を把握することは非常に重要です。
また、どのような財産が遺産の対象になるのかをしっかりと把握する必要もあります。
相続人調査と法定相続
誰が相続人になる権利をもつのかは民法で決められています。
それを「法定相続人」と言います。
誰が相続人なのかを調べるためには、亡くなった方の「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」等を出生から死亡まですべて取得します。
この相続人調査を怠ると、相続手続きに非常に長い期間を要したり、いわゆる「争族」が発生してしまったりする場合もあります。
相続において、それほど大切なものがここで説明する相続人調査なのです。
「相続人が誰になるかくらい、だいたい分かっている」と安心せずに、しっかりと戸籍を収集して、調査しましょう。
戸籍を収集する
戸籍を収集する場合は、本籍地のある市区町村役場にしなければなりません。
本籍地が遠方にある場合や、都合により出向けないような場合は郵送による申請も可能ですが、戸籍を請求できるのは、原則、その戸籍の構成員や直系親族の方などです。
代理人の場合は委任状が必要になりますが、行政書士などの国家資格をもったプロに依頼する場合は、委任状は必要ありません。
相続財産とは
相続は、財産や権利・義務をそのまま受け継ぐということです。
つまり、亡くなった方が持っていた財産や権利・義務のすべてを相続することになりますから、借金(保証債務も含む)も一緒に相続しなければなりません。
ですので、どんなに遅くとも3ヶ月以内には相続財産額がプラスなのかマイナスなのかくらいは確認できる調査をしなければいけません。(期限のある手続き 参照)
財産には、相続財産とみなし相続財産、祭祀財産の3種類があります。
みなし相続財産とは
相続税は被相続人の財産に対して課せられる税金ですが、厳密な意味で相続財産ではない死亡保険金や死亡退職金もその対象となり、課税の対象となります。
これらを「みなし相続財産」といいます。
相続財産とは
相続財産とは、亡くなった方(被相続人)が亡くなったとき(相続開始時)に持っていた財産をいいます。
相続財産には、現預金や不動産、株式など相続してプラスになるものと、借金などマイナスになるものがあります。
また、相続財産にならないものや、保証債務など隠れ債務などもあることがありますのでしっかり調査が必要です。
調査の結果、「相続放棄をしておけば良かった・・・」ということにならないよう、相続が発生して2カ月以内の早い時期、遅くても3カ月以内にはプラスかマイナスなのかの確認ができるくらいの調査が必要です。
「ちゃんと財産は把握できているから」ときちんと調査されない方が多いですが、このような方が最も後々もめることになります。
もめごとはイレギュラーなことが起きたときに発生しやすいので注意が必要です。
プラスの財産
- 不動産(土地・建物)・・・宅地・居宅・農地・店舗・貸地など
- 不動産上の権利・・・借地権・地上権・定期借地権など
- 金融資産・・・現金・預貯金・有価証券・小切手・株式・国債・社債・債権・貸付金・売掛金・手形債権など
- 動産・・・車・家財・骨董品・宝石・貴金属など
- その他・・・株式・ゴルフ会員権・著作権・特許権
マイナスの財産
- 借金・・・借入金・買掛金・手形債務・振出小切手など
- 公租公課・・・未払の所得税・住民税・固定資産税
- 保証債務
- その他・・・未払費用・未払利息・未払の医療費・預かり敷金など
遺産に該当しないもの
- 財産分与請求権
- 生活保護受給権
- 身元保証債務
- 扶養請求権
- 受取人指定のある生命保険金
- 墓地、霊廟、仏壇・仏具、神具など祭祀に関するもの
などがあります。
遺産の評価はどうする?
民法上の相続財産を引き継ぐ手続きでは、評価方法は定められておらず、一般的には、時価で換算することになります。
ただ、相続財産の評価では、評価方法により相続税の評価額が変わることもあり、民法と税法上では、相続財産の対象範囲とその評価方法の取り扱いが異なります。
ですから、相続財産評価には専門的な判断が必要です。