相続税が非課税となる財産
相続税においては、その財産の性格や政策的な配慮から非課税とされている財産があります。
その代表例としては、墓所、霊びょう、祭具やこれらに準ずるものがあります。
墓所、霊びょうには、墓地、墓石やおたまやなどが含まれ、さらに庭内神し、神棚、神体、神具、仏壇、位牌、仏像、仏具、古墳等で日常礼拝の用に供しているものがこれらに準ずるものとされていますが、これらの中でも骨とう品や投資の対象として所有するものは含みません。
なお、庭内神しとは、屋敷内にある社や祠のようなご神体を祀る設備をいいますが、その設備の敷地への定着性や日常礼拝の状況などによっては、その設備の敷地や附属設備についても非課税財産となる場合があります。
特殊な非課税財産
相続税の非課税財産の特殊なものとして、「皇室経済法第7条の規定により皇位ととともに皇嗣が受けた物」があります。
ここに出てくる皇室経済法7条では、「皇位とともに伝わるべき由緒ある物は、皇位とともに、皇嗣が、これを受ける。」と定められています。そして、この「由緒ある物」とはいわゆる三種の神器を指しています。
ちなみに、三種の神器とは、古くから、天皇家に伝わる宝物で、八咫鏡(やたのかがみ)、天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)、八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)のことです。
これらの規定により、皇位とともに皇嗣が受ける三種の神器について相続税は非課税とされています。一方、贈与税においては同様の非課税規定は設けられていません。これは、「由緒ある物」を生前に贈与することが想定されていないためです。
現在、天皇陛下のご意向を踏まえて生前退位について国会で具体的な検討が行われています。最終的に生前退位が実現する場合には、特別法などにおいて、贈与税の非課税規定が設けられることになるのでしょう。
その他の非課税財産
相続税の非課税財産には、一定の金額の生命保険金や死亡退職金があります。
被相続人が保険料を負担して保険契約者となっていた生命保険金は、生命保険契約に基づいて保険金受取人がダイレクトに受け取るものですし、死亡退職金(被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの)も退職金支給規定などにより相続人などに支給されるものですから、相続財産そのものではなく遺産分割の対象にもならないものですが、実質的には相続財産と変わらない経済的価値を有することから、課税の公平上、相続財産とみなされて相続税の課税対象とされています。
ただし、相続人(相続放棄をした者などは除きます。)が取得した生命保険金や死亡退職金については、法定相続人(相続放棄した者を含みます。)一人につき500万円まで非課税財産とされています。
一方、相続財産とみなされたものについては、所得税法において非課税所得とされていることから、相続税が非課税となる範囲の生命保険金や死亡退職金については、結果的に相続税と所得税のいずれをも負担することなくその全額を納税資金などに使うことができるということになります。
相続人の納税資金が心配されるような場合は、納税資金対策としてある程度の生命保険に加入しておくと良いでしょう。